# Listen to List
Guest : 中川龍太郎(映画監督)
一歩はみ出したクリエイターが大事にしている音楽やラジオについて語ってもらう、#Listen to List 。第2回目のゲストは、映画監督の中川龍太郎さん。人々の心に寄り添った物語を丁寧に掬う作品を撮り続け、現在公開中の『やがて海へと届く』では震災というテーマに対して消えることのない悲しみや痛みを実直に映しています。映画を制作する上で欠かせなかった音楽や思い出深い一曲などお伺いしました。
#1 尾崎豊『15の夜』
出典:zelone records盗んだバイクで走り出す 行く先も解らぬまま
暗い夜の帳りの中へ
誰にも縛られたくないて 逃げ込んだこの夜に
自由になれた気がした15の夜
引用:尾崎豊『15の夜』
学生時代は、周りの友達のように上手く物事を進められなかったという中川さん。高校生のときに出会った、ある同級生の存在が忘れられないそうです。
「隣の席に座っていたトバリくんという子がいて、レゲエが好きで口が悪くて不良でした。明らかに周りの子とは違っていて、堂々としていてカッコよかったんですよね。いつの間にかトバリくんのファンになっていました。彼は尾崎豊の曲がとても好きで、彼への憧れがあって僕も尾崎豊を聞いていました。ある日、『15の夜』の歌詞を彼が黒板に書いていたんですよ。書いてある言葉のパワーに惹かれて思わずメモしましたね。周りとは違う自分を支えていますし、本当に辛い時は一番聞いているかもしれません。自分の原点の一曲ですね」
#2 羊文学『あいまいでいいよ』
あいまいでいいよ
本当のことは後回しで
忘れちゃおうよ
引用:羊文学『あいまいでいいよ』
生きづらかった学生時代から、人と違うことをポジティブに受け止めてもらえる今の世界で映画やドラマを撮りつづけていますが、詩人としても賞を受賞するなど言葉の人でもあります。落ち込んだときに聴く音楽で大事にしているのは歌詞だといいます。
「『湯上がりスケッチ』というドラマを撮って、主題歌の『あいまいでいいよ』にはとても救われましたね。曖昧でいいということを強く言い切っていて、それってすごいなと思ったんです。本来良いとされていないことを強く言い切るのはロックでかっこいい。羊文学の歌詞には、メッセージがあります。音楽は曲が一番だけど、落ち込んでるときにふとメロディの中で歌詞が入ってくるから自分にすごくダイレクトに刺さってくることってあると思うんです。そんな曲を大事に聴いていますね」
#3 Sigur Ros 『Hoppipolla』
現在公開中の『やがて海へと届く』。音楽は中川さんが大学時代から好きだった小瀬村晶さんが担当しており、映画をつくる過程で、音楽がとても重要な役割を果たしているそうです。
「脚本を書く際に、この映画の音楽をイメージできて掴めたときに書けるんですよ。これって一曲を見つけると物語が浮かんでくるんです。『やがて海へと届く』は震災で死んだ友達と今の自分との関係性の話なので、アイスランドのバンド、シガー・ロスの音楽がぴったりでした。生と死が混ざり合う感じが物語と近くて、聞きながら撮っていましたね。僕にとって映画をつくる作業で欠かせないのが音楽です」