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# Listen to List
Guest : たなかみさき(イラストレーター)

一歩はみ出したクリエイターが大事にしている音楽やラジオについて語ってもらう、#Listen to List 。第1回目のゲストは、イラストレーターのたなかみさきさん。生きていく支えになっている音楽やよく聴いて参考にしているラジオについてお聞きしました。また、今回の企画に合わせて特別に描き下ろしていただいたイラストに込められた想いもお伺いしました。

#1 安住紳一郎『日曜天国』

イラストレーターに加え、J-WAVE『ミッドナイトチャイム』のパーソナリティも務めているたなかさん。イラストとラジオには親和性があるといいます。

「ラジオもイラストレーションも、生活の延長線にあるというか、他人との関わり合い方によく似ていています。付かず離れず遠回しに伝えるようにすることで、ラジオを聴いてくれる人、またはイラストを見てくれる人自身で広く解釈してもらえたら嬉しいなと思っています」

ラジオは声だけのシンプルな媒体。だからこそ気をつけていることは、よく聞くラジオから学んでいると語ります。

「かっこつけたり、上辺だけのことを話しているとすごくつまらないものになってしまう。でも安住紳一郎さんの『日曜天国』は、本当に面白いくらい嘘がなくて、聴いていてとても楽しい。ラジオのあるべき姿が詰まっている気がしますね。そういう“ラジオじゃないと出せない自分”を大事にしながら、リスナーに影響を与えるよりも一緒に考える存在になりたいです」

#2 坂本慎太郎『幽霊の気分で』

出典:zelone records
さてどこに行こう 何になろう
幽霊の気分で
さて何をしよう 何になろう
透きとおる身体で

引用:坂本慎太郎『幽霊の気分で』

ラジオではリスナーに寄り添う存在のたなかさん。それでも落ち込む日や不安な夜はもちろん訪れます。「そんなときにこの曲を聴くと、元気じゃなくてもいいかと思えるんです」と語ります。

「辛いときはひたすら寝ていますが、それでも働かなくてはいけない、外に出なくてはいけないときなどは、坂本慎太郎さんの『幽霊の気分で』という曲をよく聴きます。誰も自分のことを気にかけてないんじゃないかという気持ちになるときがあって。それは裏を返せばすごく自由なことですよね。今あるものがなくなってしまったとしても、まあなんとかなるかな、という気分になる曲です」

#3 宇多田ヒカル『Latters』

出典:utadahikaru.jp
今日選んだアミダくじの線が
どこに続くかはわからない
怠け者な私が毎日働く理由

引用:宇多田ヒカル『Latters』

「人生のなかで時に立ち止まりながらも、その時の自分を愛することを大事にしている」と話します。それができるのは、長く活動しているアーティストの存在が大きいそうです。

「宇多田ヒカルさんを友人のように想い馳せていて、大切にしている曲がたくさんあります。“宇多田無双”というプレイリストを作っているくらい。特に『Letters』という曲が好きです。彼女に限らずですが、今の自分の現状で知ってる曲の聞こえ方が全然違うものになることがよくあると思います。それぐらい自分の心が日々変化しているということでもあるのですが、この曲は全体的に悲しくて、自分が渇望しているものや大切なものはなんだろう?と引き止められます。この曲を聴くと何もない砂漠が頭に浮かびます。曲を聴いて行ったことのない場所の風景を思い浮かべられるのって本当にすごいなと思いますね」

#4 大貫妙子『じゃじゃ馬娘』

出典:onukitaeko.jp
女の子の遊びなんか嫌いよ
泥だらけで走り回る
私のことじゃじゃ馬娘と呼んで
相手にしてくれないならいいの

引用:大貫妙子『じゃじゃ馬娘』

みさきさんが一歩はみ出すときに背中を押された曲は、大貫妙子の『じゃじゃ馬娘』。社会や集団のものさしではなく自分の生き方を模索していくなかで、「強い女性」に憧れていたといいます。

「この曲の世界から這い出てくるようなイントロが好きです。初めて聞いたとき、私の歌!?って思うくらいシンパシーを感じましたね。最初の歌詞は、おままごとが苦手でプロレスごっこをしたり、お兄ちゃんの真っ黒のランドセルを背負ったりしていた幼少期を思い出します。今思うと、小学生ながらに大きな流れに飲まれてしまうのが恐かったんでしょうね。両親は何も言わずに見守ってくれていました。「はみ出す」の前に「気づく」があって、「気づく」の前には考える時間が必要で。ある程度放っておいてくれる優しさは大切だなと思います」

#Listen to Listのイラストについて

“はみ出す”という言葉は決して能動的なものではなく、他人から言われたり後から気がついたりすること。イラストに込めたのはそんな想いだと語ります。

「前を向いてはみ出す方向に進んでいるよりも、ふと立ち止まってじっくり考えている方が現実的で、それくらいゆっくり生きていていいと思っています。一歩踏み出すことは大変で、時間のかかること。だから遅すぎることはないし、他人と違う自分は誰しもが持っているものだと感じます。自分でそれに気づいて自分のことをよく考えてあげると、おのずと社会のおかしさ、理不尽さにも気がつくはずです。自分や大切な人、ものが安心して好きなところにいられて、好きなように生きられるようにこれからも考え続けて行きたいです」

CREDIT

ILLUSTRATOR

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1992生 叙情的かつ軽やかなタッチが特徴のイラストレーター。
J-waveラジオ「ミッドナイトチャイム」のパーソナリティとしても活動中。

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1994年長崎県生まれ。本を作るレーベル bundleを立ち上げ、編集をおこなっている。その傍ら私情的エッセイと詩の狭間で言葉を使った表現をおこない、2020年には初の詩集「いっさいすべての春」を刊行した。

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