#2 あっこゴリラの「背中を押す言葉」
若い馬は走れ。
フォームにこだわるのは
そのあとだ
一歩踏み出したいし、今いる世界をもっと鮮やかにしていきたい。そんな時、誰かにかけられた言葉やふと触れた言葉が、背中を押してくれることがあります。この連載ではさまざまな人たちの心を軽くしたり、別の場所へ向かう歩みの支えになってくれた言葉をコラムで紹介。第2回となる今回はラッパーのあっこゴリラさんの「背中を押す言葉」です。
私の背中を押してくれるふたつの言葉。まず、ひとつは、「若い馬は走れ。フォームにこだわるのはそのあとだ」。
なんかしたいけど何もないし、何をしたいかわかんないし、知れば知るほど腰が重くなってた10代の頃。色川武大さんの著書『うらおもて人生録』を読んで、この言葉に出会い、とりあえず限界だと思うまで手当たり次第やってみることにしました。大人になって何度もこういったターンかくるたびにこの言葉を思い出しています。
この言葉によって失敗という概念が消え、行動や思考の新たなサイクルが生まれたような気がします。実験精神で人生に挑むようになったし、行動や思考のサイクルのなかで、またフォームにこだわりだして固まってきちゃった時に、そのフォームを解体して走る勇気になっています。勇気が必要な時にいつも背中を押してくれる言葉です。
もうひとつの言葉は、映画『ハーフ・オブ・イット:面白いのはこれから』のなかのセリフ。田舎町で同級生の宿題代行をして小遣いを稼ぐ高校生のエリーが、アメフト部のポールからラブレターの代筆をしてほしいと頼まれる、というのが物語の始まり。でも、ラブレターを送る相手はエリーも思いを寄せていたアスター。自分の気持ちを押してラブレターの代行をし、ポールとアスターはデートをするようになる……という人間模様が、この映画では描かれています。
この物語のなかで、「愛は寛容」というクラスメートに対して、エリーがわざわざ教会で反論した時に放った「愛は厄介」という言葉は、私がいつも人とのわかり合えなさに悩んだ時に思い出します。
人とコミュニケーションをとったり、意見を交換する時、相互に知識の格差があると優しさが正しい優しいにならないことがあるから、この言葉に合点がいきました。色川さんの言葉に影響されたような行動の変化はないけれど、心持ちが少し変わったかなと思います。なんだか、許せる範囲が広がったような。
自分が挑戦するための「若い馬は走れ。フォームにこだわるのはそのあとだ」、人と関わって生きていくうえで大切な「愛は厄介」。どちらも私の背中を違うかたちで押し、勇気づけてくれる言葉です。