森山未來は踊る。
現在まで連綿と繋がる
出逢いの数々と
「拘い」について

森山未來
Photography: Rakutaro
森山未來
森山未來

森山未來は踊る。

現在地まで連綿と繋がる出会いの数々と「拘い」について

Photography: Rakutaro
Interview & text: Aiko Iijima

森山未來

俳優 / ダンサーの森山未來さんが今、自分の立つ場所からこれまで歩んできた道、そこにあった道の選択肢を振り返る。「キャリア的にはすごくわかりやすいことでも、自分にとってどこがターニングポイントかっていつも具体的に挙げられない」という森山さんが、これまでに紡いできた思考の物語、今、特に興味を寄せている「拘う(かかずらう)」ということについて語ってもらいました。

撮影地は森山さんが11歳の頃に初めて東京に来た時からたびたび滞在していたという晴海周辺。身体を動かしながら闊歩する森山さん。出会ってきた概念や人、新たな知覚を引き連れて模索するものとは。

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森山未來
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森山未來

「今ここでやっておかないと、
もうできない気がする」

森山未來と聞いて『モテキ』や『苦役列車』などの映画作品をイメージする人も少なくないと思います。その演技が高く評価され存在感も増していった2013年、文化庁の文化交流使として、イスラエルに1年間ダンス留学しました。「結果的に周りの評価を翻すようなかたちになっただけ」と、森山さんは話します。

「自分でなにかを変えたいタイミングって他人の評価は関係がない。それを実現させることが自分にとっていちばん大事だったから、あんまり悩んだ記憶はないんです。舞台作品や映像において歩んできた道は、“選んだ”というよりも、その場その場での出会いで動いていった感覚が強くて。でも、イスラエルに行くのは『今ここでやっておかないと、もうできない気がする』と強く思ったんです。これが決め手ではないのですが、脳の海馬についての本に『20代まではインプットが可能』と書いてあって、29歳の時に行かなきゃって(笑)」

森山さんが言うように、海馬の話はさまざまな後押しのひとつ。自らが動くきかっけとなった連綿としたストーリーを話し始めます。

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「自分が踊りたいことって
なんなのか」

5歳からダンスを始めた森山さん。両親の影響でハリウッドミュージカルに慣れ親しんでいましたが、20歳の時に実際にブロードウェイに足を運びミュージカルを観た時に物足りなさを感じました。そんな中どんどん増えていくお芝居の仕事。踊りに対して物理的、時間的な距離も生まれたと言います。

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「踊りと少し距離ができて改めて、自分が踊りたいことってなんなのか考えていました。当時は自分の中でしっくりくるものが見えなかったので、ある程度ネガティブな思考ではあったんですけど、そんな時にコンテンポラリーという概念に出会って」

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そして2012年に参加した、手塚治虫の作品世界を題材にしたダンス作品『テヅカ TeZukA』が森山さんに新たな視点を与えます。

「『テヅカ TeZukA』でいろんな国の人たちが集まったカンパニーに参加して、初めての海外リハーサルをしたんです。コレオグラファーの考え方もあると思うのですが、稽古の仕方や作品の構築の仕方にすごくカルチャーショックを受けて。自分の中にはない、自分の感覚の外にあるものに触れたことで、物事の見つめ方が変わりました」

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イスラエルのふたり
との出会い。
「ダンスと芝居が自然に
混ざり合うように」

そして、イスラエルに行くきっかけとなった出会いも同じ頃に。

「インバル・ピントとアヴシャロム・ポラックというふたりの世界観にもその頃に触れました。ふたりとも振付家であり、アーティストなんですけど、複合的な要素を有機的に混ぜ合わせて作品を作っていて。僕が10代〜20代初めの頃は、ダンスと芝居が離れてしまっていて、どう混ぜ合わせていいのか判然としていなかった。その一方では、踊ることで芝居に何かしらのフィードバックがあるし、その逆も然りという感覚は漠然とあって。そんな中で、彼らの世界観に触れたことによって、自分の中でのダンスと芝居の置き方というか、身体のあり方や表現の仕方が見えてきたような気がします」

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「周りと自分が合わせ鏡だった」
帰国後に気づいた、
肩書きへのこだわり

コンテンポラリーという概念に出会い、イスラエルへ赴き、「自分の肌感覚にその概念を染み込ませることができた」と言う森山さん。そんな実感を経てようやく、肩書きや評価に対して「『“やっぱり”気にしなくていいんだ』という思いが湧いてきた」と話します。

分岐点

「自分の中では肩書きにこだわっていないつもりでも、日本では特に周りがそうさせるというか。帰国してからはそういうことを言ってくる人もいなくなったのですが、ある種、僕自身がこだわっていたんだろうと思いました。周りと自分が合わせ鏡だったんだろうなって」

分岐点
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新しい知覚に触れたことで見えた自分の姿。様々なアーティストやダンサーと肩書きというものを超えた対話をして、森山さんは留学以前をこう振り返ります。

「それまでは、舞台芸術でも映像でも、監督や演出家との関係がイコールじゃない状態ってフェアじゃないなと感じていたんです。言葉をどう受け止めるか、どうコミュニケーションを取るかということに関して、肩書きや年齢は関係ないと思っていた。それは、僕が若かったから感じていたということではないと思う。ずっとフラストレーションを感じていたそんな関係値に対して、『やっぱり』と思える対話をイスラエルではできたと思います」

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「対話ありきじゃないと
物事は転がらないし、生まれない」
他者を通して自分を知る視点

それまで体感していたものづくりの環境とは違った空気の中に身を置いた森山さん。ここ数年はそこで触れたような「対話」に熱を注いでいます。

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「基本的には、人間関係の中でのコミュニケーションやダイアローグから物語が立ち上がってくればいいなと思うんです。でも、それって、すべての人間が独占的な権利を持たず、責任も背負わないという言い方もできるなと。そうなると、結局、何に対しては誰が決めてとか、そういう関係値をクリアにしないので、なかなか物事が進まないということがままある。ヒエラルキーとかわかりやすい構造みたいなものをネガティブに捉えすぎなくていいんじゃないかと思う時もあります。その構造が使われ続けるのには、やはり理由があると思うので。でも、その時に出会った人たちとコミュニケーションを重ねることによって自然に立ち上がってくる関係値をやっぱり大事にしたいなとは思いますね。時間と労力が必要なので大変ですが、既存のひな形がない、そういう関係のあり方をここ数年は模索していた気がします」

インタビュー

「対話ありきじゃないと物事は転がらないし、生まれない」。そう語る森山さんの対話の模索の先にはどんな希望があるのでしょう。そんな問いに森山さんは「答えがないなあ」と言いながら、こう続けます。

「最近『拘い(かかずらい)』っていう言葉が自分の中ですごく重要で。『拘い』って煩雑な関わり合いみたいな意味でなんですが、楽しいことも面倒なことも引っくるめて、そこと向き合って生きていくしかない。そんな中で、離れる人もいれば、新しく関わる人もいて……そういうものが自分の中に蓄積して生きてきているし、何かしらの表現に繋がっている。そして、繋がっている先には、きっとまた『拘い』がいっぱいある。それをポジティブに受け止めたいというか、そこから逃げたくないなと。他者がいて自分自身を認識する。他者と共に生きていかなければ、人間って存在し得ないと思うから」

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