中井友望

女優・中井友望が迎える
感情と思考の分岐点。

不登校、中退を経て考える「心地いい場所」への選択。

Photography: Kana Tarumi
Interview & text: Aiko Iijima

中井友望
Photography: Kana Tarumi

自分のいる世界を少し好きになれた、多くの「偏った人たち」の分岐点、そして選んだ道と潔く諦めたもう片方の道について、現在地から聞く連載企画。

最初に登場するのは、ルックスやジャンルに捉われず、新しい時代をサバイブしていく多様な女の子のロールモデルを発掘するオーディション「ミスiD 2019」でグランプリを獲得した女優・中井友望さん。荒削りながらも内に宿る原石としての力を審査員たちに見いだされました。

学生時代に不登校や中退を重ねてきた、まだ惑うことばかりの若干二十歳。そんな彼女の捉えどころのない、でもなぜか魅力的な光は一体どこから発せられているのでしょう? 人と壁を作ってしまうクセをどうにかしたいと思いながらも「楽しい時間が増えてきた」と語る中井さんが、自分だけの安全地帯を見つけるために今まさに立つ様々な考えの分岐点を聞きました。

中井友望

「『なんで泣いてるの?』って
聞かれても、なんにも言えない
ことがすごく苦しかった」

苦手だった“学校に通う”ことに挑戦しては辞めてきた中井さん。「学校生活を楽しいと感じたことがあまりなくて」と、人間関係が複雑になってきたこともあり、中学時代に学校に行けなくなってしまいます。そんな期間に映画『ヒミズ』を観たことをきっかけに、女優への憧れが生まれていきます。

ヒミズ

「自分の感情や思っていることを言葉にするのが苦手で、親や友達に『なんで泣いてるの?』って聞かれてもなんにも言えないことがすごく苦しかった。その時に『ヒミズ』を観たんです。そのなかには、感情を爆発させるというか……人間がめっちゃ生きてる姿があって、『こんなふうになりたい、羨ましい』と思いました」

中井友望
ヒミズ
女優
女優

「『自分は逃げてるんだ』って
ずっと思ってた」
それでもリセットし続けた理由

「誰も私のことを知らない場所でリスタートしたら、もしかしたらうまくいくんじゃないかって、ちょっと期待していたのかもしれません」と学生時代を振り返る中井さん。自分の居心地の良い場所を求めて選択をしてきたようにも見えますが、当時は自分に対しての後ろめたさもありました。

ミスid
ミスidグランプリ

「高校や大学を辞めた時は、『自分は逃げてるんだ』『みんなができることをなんで私はできないんだろう?』ってずっと思ってました。『できない』と言っていることも甘えな気がしてしまっていて」

ミスid
ミスidグランプリ
不登校
学生時代

「逃げてる」から「自分の合う
場所に行く」に変化した考え方

女優の仕事についても「毎回行く場所も会う人も違うから、ある意味リセットの積み重ね」と話す中井さん。しかし、少しずつ心境にも変化が生まれてきています。

女優業

「ひとつひとつの仕事が短期間だからこそ、そのなかでちゃんと楽しみたいと思うようになりました。いつも変化があってほしいし、特に最近は自粛期間が長かったぶん、たまに仕事で外に出ると今までの倍楽しい……”楽しい”というか、”生きてる”って感じがします」

中井さんさんのクセ

だからこそ、学生時代の出来事も「今は“自分の合う場所に行く選択をした”ってすごく思えています」と語る中井さん。

「別に誰に強制されているわけでもないし、自分が嫌な気持ちになることからは逃げたほうがいいなって思えるようになりました。今でもマイナス思考になっちゃう時はあるし、いろいろ考えすぎてめっちゃ辛い時も、『明日には治ってる』って思いながら時間が過ぎるのをただただ待つことができるようになりました」

中井友望
中井さんのクセ
中井友望
中井友望

中井さんが直したい思考のクセ。
「嫌われてるかもって感じると、
私から拒否してしまう」

そう思えるのはきっと、自己嫌悪しながらも、違和感のある場所からちゃんと抜け出す道を見つけられてきた経験があるからこそ。でも、やっぱり人と関わることに対する苦手意識はまだまだぬぐえません。

中井友望
分岐点

「たとえば一緒に仕事をする人でも、飲食店の店員さんでも、『この人、私のこと下に見てるかも』『嫌われてるかも』って少しでも感じると、私から拒否してしまいます。本当は全然そんなふうに思っていない人もいるでしょうし、話してみたら全然そうじゃなかったっていう人もたくさんいるから、そう感じてしまうクセを直したいです。頭ではわかっていますし、気にしすぎなんですけどね。決して自己防衛からくる感情ではなくて、このクセのせいで自分自身も辛くなってしまうんです」

中井友望
中井友望
分岐点
女優
演技
GRINインタビュー
女優

「今思えば呪いのよう」。
救いとなった「幸せそうだと魅力的
じゃない」という言葉

「このクセを克服したらもっと楽しい時間が増えると思います」と中井さん。「楽しむ機会を逃しているかもしれない」「私が損しているかもしれない」という思いから、このクセを直したいのだそう。しかし、一体なぜこの思考のクセが生まれてしまったのでしょうか。

魅力的
インタビュー

「『幸せそうだと魅力的じゃない』って人から言われたことがあって。その言葉が、今思えば呪いのようなんですけど、当時の私にとっては救いだった。ずっと辛くいれば、私にはずっと魅力があるんだって解釈をしていました。だから幸せになると怖かったし、幸せを感じると『今の私は魅力的じゃない』って思ってた。だから、辛い時が来ると楽しいというか……安心していたし、このままでいいって思っていました」

魅力的
中井友望
インタビュー
GRIN
グリン

「なんで幸せが良くないんだろう?」
救いの言葉から一変した現在地

そんな思考に風穴が空いたのは、3ヶ月前に挑んだ初めての舞台がきっかけでした。

巣鴨

「初めて自分の殻を破るような体験をしたんです。どれだけ気持ちが落ちていても、舞台に立って役を通した時間を過ごすと、終演した時には私自身のマイナスな感情を一切忘れることができて。この感覚がずっと続けばいいのにと思いました。そうやって舞台をやっているうちに『なんで幸せが良くないんだろう?』って思うようになって。それに気づいてからは楽しい時間も増えました。増えたっていうか、辛い時間と幸せな時間の量は変わってなくても、幸せなほうをいっぱい見るようにしたら、密度が変わった感じがします」

中井友望
中井友望

「ミスiD」グランプリ獲得から、加速度的に多くの分岐を迎えている中井さん。決して器用な歩み方ではないかもしれないけれど、「楽しい」という概念すら変化させながら彼女だけの歩みを進めています。

「女優としても、私が羨ましいと思った“めっちゃ生きてる”感じはまだ全然できていないです。だから、自分が羨ましいと思ったくらい、もっと生きられるようになりたいです」

巣鴨
喫茶店
中井友望
中井友望
中井友望

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