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MODEL
YUI KANNO
MASAMITSU MAGOME
PHOTOGRAPHY
AIKO IIJIMA
INTERVIEW & TEXT
菅野結以
# FEATURE

菅野結以が語る
完璧より“抜け感”
のあるかわいさ

「できない」と言い切ることは、自分を自分と認めるための一歩なのかもしれない。モデルの菅野結以さんも、かつては完璧主義だったけれど、その癖を手放してから人生がよりきらめき出したひとり。

中学生時代に雑誌『Hana* chu→』でデビューし、『Popteen』『LARME』などで多くの女の子たちの憧れとなった彼女は今、「趣味をすべて仕事にする」を人生のテーマに掲げ、モデルのみならず、ラジオパーソナリティや、デザイナー、サウナ熱波師など、何足もの草鞋を履いています。

彼女の地元で撮影を行いながら、現在の菅野さんの根源にあるという、完璧主義な思考を捨てるきっかけとなった経験をはじめ、貪欲に自分の道を自分で選び、自分で決めたペースをしっかりと守りながら自由に進める理由を語ってもらいました。

「モデルがにわかで言ってる」
って思われるのが嫌だった

「好きっていうパッションだけでしか動けない」。そう語る菅野さんは、今年1月にサウナ熱波師の資格を取得。大ブームになったサウナに対しての愛情に説得力を持たせるにはどうしたらいいのだろうと考えたといいます。

「サウナに行くことって日常的すぎるから、わざわざSNSにも載せてなかったんですけど、『モデルがにわかで言ってやがる』って思われるのがいちばん嫌だったから、とことんやってプロになろうって決めたんです」

菅野結以
菅野結以
菅野結以
ミスid
モデル
モデル

誰が決めたかわからない
ルールより、私は好きなことをやる

「好きになったら上澄みだけじゃもったいない」とどんどん深掘りしていく菅野さんが、好きなことを追求し始めたのは小学生の頃。当時、みんなが言う「かわいい」に共感できず、絵を描いたり、音楽を聴いたりと、大勢よりひとりですることが好きだと気づいていったのが始まりでした。

「他人から受けるアクションで自分がいい気持ちになることがなかったんです。たとえば、小学校でいじめの標的が順々に回ったり、学校というもの自体、誰が決めたかわからないルールにみんなが従っていることに違和感しかなかった。そういう外的なことに影響されるより、私は自分の好きなことをやらなきゃって」

好きなことに夢中な瞬間は
飛べる。
My Bloody Valentineとの
出会い

そんな菅野さんに拍車をかけたのが、シューゲイザーバンドMy Bloody Valentineとの出会い。12歳の時にたまたま訪れたライブのSEで流れていた彼らの音楽を聴き、人生を狂わされるほどの衝撃を受けました。

「雷に打たれるってこういうことだなと。ずっと気の合う人がいないと思っていたのに、めちゃくちゃ気の合う人を見つけた感じでした。私が抱えていた曖昧な感情が音楽で表現されていて、胎内回帰のような唯一無二の感覚になれて」

「そういう感覚を早めに知ることができたのは大きい」と菅野さんは続けます。

「好きなことに夢中になっている瞬間だけは飛べる。他人や世の中は変えられないけど、まわりにある好きなものに自分から飛び込んでいく瞬間や、自分にとっての安全な場所をたくさんつくっていけばいいと気づきました」

『Popteen』に出演して
向き合ったコンプレックスと
完璧主義な自分

そうやって周りを気にせずに過ごしていた菅野さん。特に雑誌『Popteen』に出演し始めてからは、「周りの声を聞いている暇がなかった」と語ります。

「もともとはコンプレックスの塊です。誌面に載っている自分を見るのも嫌で。完璧主義だったから、ひとつでもミスしたり、いただいた仕事を受けなかったら、もう自分は求められなくなるかも、という恐怖もあった。だから、忙しすぎてひとつひとつのことをちゃんとできず、ただこなすだけになっていたことが悔しくて。とにかく次の撮影までに絶対もっと良くしようとしていました」

休んでいいから
自分のペースをつくっていく

そんな思いでがむしゃらに動き続け、菅野さんは19歳の時に撮影現場で倒れてしまいます。病院で目が覚め、お医者さんから投げかけられたのは「仕事に行ったら死ぬから、休みなさい」という言葉。初めて1ヶ月間休むことに専念しましたが、「休んでいる間に代わりが見つかって自分は必要とされなくなってしまうんじゃないかと不安でした」と焦りが募ります。そんななか、菅野さんの意識を大きく変える出来事が。

「「休養中に発売された雑誌の表紙が、サプライズで私になっていたんです。本屋さんで女子高生3人組が全員その雑誌を手に取ってレジに行っている姿を目の前で見て、号泣しました。自分では止まってると思っていたけど、見てくれている人がいた。休んでいいから、自分のペースをちゃんとつくっていこうと思える大きなきっかけでした」

才能がなくても、
いちばん愛せたらいい

もうひとつ菅野さんに大きな影響を与えたのは、現在パーソナリティを務めるラジオ番組『RADIO DRAGON』の存在。ずっとリスナーだったこの番組に対して「絶対私がやるべきだ」と思い、オーディションの締め切りが過ぎていたにもかからず、熱量を押し通しパーソナリティになりました。愛だけで突っ走ってしまった菅野さんは、番組が始まってからあることに気づきます。

「『毎週知らない人と何十分も生放送で喋らなきゃいけない』って気づいて(笑)。なるべく人と関わらないように生きていたのに、人に興味を持たないと成立しない。話も上手にできないし、悔しくて毎回泣きながら帰っていました」

それでも大好きなラジオをやりたかったという菅野さん。苦手よりも“好き”が勝り、毎回ゲストのことをとにかく予習し、5年ほどしてようやく楽しめるようになりました。

「“好き”はなにをも凌駕すると思っていて。劣等生スタートでも、才能がなくても、いちばん愛せたらいい。完璧主義の名残かもしれませんが、どの仕事に対しても、いつもなにかしら悔しいから続けられているところもあって。悔しさをそのままにしておくのは悔しい。だから、絶対別の力に変えていきたいんです」

ちょっと“抜け感”が
あったほうがかわいい

これまでを振り返りながら、「完璧主義を捨ててからは楽になりました」と菅野さんは続けます。

「今はもう超マイペース。今は大切にしたいものをちゃんと選んで、ちゃんと捨てるって意識できています」

そのために大切にしているのは“抜け感”という言い訳なんだとか。

「自分のボケてる部分やできない部分は、『完璧な人間よりもちょっと“抜け感”があったほうがかわいい』って(笑)。ちょっとのミスで落ち込んでしまっていたけど、ユーモアに変えていくことが大事。完璧主義の時って本当にユーモアなかったんですけど、結果、なんでも笑えるようになる。今はそう思えます」

抜け感
菅野さん
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CREDIT

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菅野結以

1987年、千葉県生まれ。10代の頃から「Popteen」「PopSister」の専属モデルを務め、カリスマモデルと称される。アパレル・ブランド〈Crayme,〉のディレクターおよびデザイナーを務めているほか、豊富な音楽知識を生かしてラジオのパーソナリティーを担当している。サウナ好きが高じて熱波師としても活動中。

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馬込将充

1993年、千葉県生まれ。武蔵野美術大学映像学科卒業。2015年 第13回写真1_WALL審査員奨励賞(菊地敦己選)を受賞。

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BACON THEATER

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