#FOCUS
YUKA NISHIIZUMI
FOCUS VOL.07 ニシイズミユカ
5%の勇気と衝動で進んでいく
2色で描く夢の先
『2本のペンでなんでも描ける 2COLORS イラストBOOK』を出版したイラストレーターのニシイズミユカさん。“好き”を指針とした人生の歩みや、幅広い表現についてお伺いしました。
PHOTOGRAPHY
HANA YOSHINO
赤と青、緑とピンクといった、たった2色の組み合わせで華やかなイラストを描き、ファンの心を掴んでいるイラストレーターのニシイズミユカさん。多色を使わず、2本のペンで描こうと思ったのは、旅先でのスケッチがきっかけだったそう。
「2018年頃に京都を訪れたとき、2色のペンだけ鞄に入れて、旅先でスケッチをしました。もともと多色の配色に対して少し苦手意識があったのですが、色数を絞ったことでスラスラ描くことができ、街でのスケッチにピッタリだと感じたんです。そのような気づきがきっかけとなり、出先でのスケッチを中心に2色で描くようになりました」
ニシイズミさんの好きな2色は青とオレンジ。つい選んでしまう理由をこう語ります。
「単純にオレンジが一番好きだから、というのが理由なのですが、オレンジは光を、ブルーは影を表現しやすいという理由もあります。太陽と海のような、さわやかでカラッとした印象の組み合わせがとても好きですね。ただの線画でも陽と陰、暖と寒などそれぞれの色に意味を持たせて表現できるのが2色のペンで描くことの面白さだと思います」
ニシイズミさんは紙にイラストを描くだけでなく、実際にぬいぐるみを編んでみたり、マグネットを作ってみたり、最近は立体物にも挑戦しています。平面を越えた創作は、彼女の趣味になっているといいます。
「創作の手順としては、イラストを立体に落とし込んでいく、というより、空想から立体やイラストを作り上げていくイメージのほうが、近いように思いますね。イラストは目で見て楽しむことが主ですが、立体物にはまた違った楽しさがある気がして、つい制作してしまいます。触ったり、さまざまな角度から眺めたりできますよね。日常の溶け込み方もイラストとは異なります。どちらの表現の方がしっくりくるのかを考える時間がとても好きなので、イラストも立体も続けていきたいです」
イラストレーションの枠に留まらず創作に直向きな彼女。専門学校を卒業後、5年間はユニフォームデザイナーとして過ごし、その後イラストレーターへ転身しています。思い切った決断に恐怖心はなかったのでしょうか。
「長く続けていた仕事だからこそ、恐怖心はすごくありました。ですが、どの選択をするにも、リスクはあります。それならやってみたいことや楽しいことを選びたいと思って、イラストレーターになる決断をしました。性格上、深く考えるより先に体が動いてしまうところもあって。イラストも、それ以外の創作物も、やってみたくてやっている感覚です」
彼女が大きな一歩を踏み出せた理由には、衝動的な性格に加えて、“5%の勇気”があったからだといいます。
「何かに挑戦するとき、100%の勇気を出さないといけないんじゃないかと重く考えてしまう方もいらっしゃると思うんですが、5%の勇気で動いてしまっていいと考えています。例えば私の場合だと、描いたイラストをとりあえずInstagramに投稿してみるところから始めました。それに今の世の中はその5%の勇気を受容してくれる時代になっていると思うんです。チャレンジすることへのハードルが下がっている」
柔らかな雰囲気を纏いながらも、強く真っ直ぐな瞳で話すニシイズミさん。やりたいことに踏み出せない、そもそもどう動き出していいかもわからない、そんな方の背中をそっと押してくれるように感じます。
「『勇気を出してみてもリターンがない』『100%の勇気を出さないとやりたいことには辿り着けないんじゃないか』と考え込まずに、まずは自分の身近なところで、その夢に向かって変えられることを一つでいいから変えてみることからはじめてほしいです。5%ずつでも進んでいけば、最終的に夢見ていたところに到達しているんじゃないかなと、今までの経験を踏まえてもそう思います」
イラストレーターになって5年が経ち、2冊目となる書籍『2本のペンでなんでも描ける 2COLORS イラストBOOK』が11月11日に発売されました。2色のイラストレーションの集大成とも言える本書は、ファンの方からの質問をもとに作られたそう。
「2色の色選びや、構図の決め方についての質問を多くいただいていました。当時は感覚的に描いていることが多く、うまく言語化できなかったのですが、いつか何かしらの形でまとめてお伝えできたらいいなと思っていました。その後、編集者の方から『2色で描くイラストの本を出してみませんか?』とお声がけいただき、今回書籍としてお届けすることができました」
最後に、この本をどんな人に届けたいかお聞きしました。
「これまでイラストというものにそこまで触れてこなかったけど、少し日々を潤したい。今日見た忘れたくないものを、絵という手段で残してみたい。そんな方が一歩足を踏み出すときにこの本を持っていてくれたら嬉しいです。私自身、やってみたいことやいいなと思ったことへ衝動的に動く熱量を大事にしているので、描いてみたい!と感情が動いて、ペンを持つきっかけになればと思います」