GRIN

ふがいない僕の社会距離日記

偽りのワルツを踊れ

初めて買ったCDはくるりだとこれまで書いてきたし誰かに話したこともある。
しかし、本当はファンモンことファンキーモンキーベイビーズだったとここで懺悔したい。

中学に入学してすぐ、母と姉から「中学生にもなって音楽を聴かないなんて」と言われ近所のTSUTAYAに連れていかれCDを選ばされ手に取ったのが大きく売り出されていたファンキーモンキーベイビーズの『ちっぽけな勇気』だった。
俳優の顔が大きくプリントされたジャケットをなぜ選んだのかは分からないが、自分の好きな音楽の分別もつかない12歳にとってはそれがキャッチーで聴くべき音楽だと思ったのだろう。父親が会社のクリスマス会のビンゴ大会でもらってきたライム色のiPod nanoにCDを取り込み聴いたその曲は、テンポもいいしなんだか良い事を言っているような気がして好きになった。

スマホなんてないあの時に世の中にはどんな音楽があるのかなんて知りもしなかったが、小さい頃から両親の車の中で流れていたのはスピッツやユーミンだったし、姉の部屋から聞こえてきた音楽はaikoだった。その子どもが選んだのがファンモンだった時、家族は一体どんな気持ちだったのだろうか。
しかし、音楽を聴いている内にどこか違和感を覚え始めた。たしかに歌は正しいことを言っているし勇気づけられるような気もする。だがなんだがしっくりこないし飽きてしまう。なにより自分の中にあるねじれた自意識や思春期の複雑な感情とマッチする部分がない。

そんな中、テレビから流れてきたある音楽が気になるようになった。菅野美穂が出ているチオビタのCMである。そのCMの隅には小さく「くるり」と書いてあった。当時から映画は好きだったので『天然コケッコー』を観ていたらエンディングでまたもや「くるり」の曲が流れた。そして、ブックオフに漫画を漁りに行きなんとなくCDの棚を見るとそこには「くるり」の文字があり、手に取ったのが『ワルツを踊れ Tanz Walzer』だったのだ。そこにはチオビタのCMで流れていた「ジュビリー」も、『天然コケッコー』のエンディングで流れていた「言葉はさんかく こころは四角」も収録されていた。中2の時である。

そこから自分の好きな音楽の輪郭がはっきりし、ブックオフで手に入るくるりのCDはすべて買い、TSUTAYAでくるりの周辺に陳列されているものを色々とレンタルした。その中で出会ったのがフジファブリック、銀杏BOYZ、andymoriだった。中3の時に買ってもらった携帯のアドレスは「love_fujifabric」という文字を入れたほどだった。高校生になって買ったCDは星野源の『ばかのうた』で、高3の時に夜行バスに乗り初めて行ったライブはくるりで、大学に上京し最初に行ったライブはandymoriだった。卒業旅行で訪れたのはウィーンで、この地では『ワルツを踊れ』が収録されている。

ウィーンにて

こうして初めて買ったCDは『ちっぽけな勇気』である事実は2013年のファンモン解散と共に遠くに葬り去ってしまった。しかし、1年前の活動再開で再び目にするようになり、「初めて買ったCDはくるりだ」と自分に言い聞かせ事実にしていた嘘を省みるようになった。ここで告白することによって、見栄を張りカッコつけてきた自分との決別をしたい。ファンモンを選んだのも自分だし、くるりを選んだのも自分なのだ。どちらも10代のある時期に好きになったものであることは変わりない。その好きだった気持ちをなかったものにしてはいけないような気が今ではしている。実家に帰れば紛れもなく自分の部屋のCDラックにはファンモンが並んでいるのだから。

CREDIT

WRITER

  • HOME
  • TWITTER
IMAGE

1994年生まれ。はてなブログにて日記を書き、本にしている。趣味は散歩。

  • HOME
  • TWITTER
MORE

EDIT

  • HOME
  • INSTAGRAM
IMAGE

1994年長崎県生まれ。本を作るレーベル bundleを立ち上げ、編集をおこなっている。その傍ら私情的エッセイと詩の狭間で言葉を使った表現をおこない、2020年には初の詩集「いっさいすべての春」を刊行した。

  • HOME
  • INSTAGRAM
MORE