GRIN

わたしはきっとわるくない 05
ぼくいずみ

パルコのレストランフロアをうろうろして、原稿を書くお店を探した。ライスコロッケが目に入り、イタリアンのお店に入った。お父さんが大好きなライスコロッケ。元気かなあと思いながらぱくぱく食べる。またいっしょにごはんが食べたい。そんな些細なことさえ、遠くに住んでいたらすぐにはかなわない。親のことを考えると、夢ばかり追いかけて東京で生きていることに申し訳なさを感じるけれど、それでも私は、ここにいたい。

誰かといること、一人でいることについて考える。というのも、最近は人に気を遣いすぎて疲れてしまったから。遊びでも仕事でもそれが続いてしまい毎日しんどかった。子どものころから我慢をして気を遣うタイプだったらしい。けれどマイペースで好きなことには熱中する。大人になってもその性格は変わらず、マイペースに見えて相手がどう思っているかを気にしてしまうのだった。誰かとごはんに行くなら場所選びも、美味しいかどうかも、楽しんでいるかも、とても気になってしまって全然自分の箸が進まない。仕事も、今の働きぶりでいいのだろうか、上司はどう思ってるんだろうと不安になってしまい、クビになるんじゃないかとまで想像してしまう。人は好きだけれど、人のことを考えすぎて、疲れた。そうなると、一人になりたいと思うのだった。

真夜中、私は一人になった。ああ、自由だ、と思って、ヘッドホンで好きな音楽を大音量で聴く。「僕の部屋は僕を守るけど 僕をひとりぼっちにもするよね」と銀杏BOYZが歌う。まさにその通りだなと枕に顔を埋めながら思う。一人になりたいけれど、本当の一人にはなりたくない。誰かといることの幸せや喜びを、私は知っている。映画を見て、あのシーン良かったよねと言うのが好き。美味しいものを食べて笑い合ったり、帰り道に猫を撫でたりして、家路につきたい。狭いベッドでいっしょに眠りたいし、寝癖でぼさぼさな頭を見て、抱きしめたい。文章はもちろん一人で書けるし、孤独な作業なのだけれど、誰かといたときの記憶がないと書けない。雑誌作りも、頼れるパートナーがいないとできないことだらけだし、誌面に出てくれる人も必要だ。仕事だって、まだまだ未熟な私を支えてくれる上司がいないとできないし、取材を受けてくれる人、写真を撮ってくれる人、衣装を用意してくれる人、みんながいるからできること。感謝と愛を、忘れたくない。あなたのことを、大事にしたい。あなたといたいと願うことは、あなたの負担になりますか?

一人で満たされることもあるし、誰かといるから得られる幸せもある。どちらが絶対にいい、というのはなくて、どちらも生きていくうえで必要な時間だと思う。私にとって、あなたは必要で、あなたにとって私もそんな存在になれたらいい。そうなれなくても、そばにいれて嬉しい。素直に伝えられない日もあるけれど、たまに花束といっしょに照れて言おうと思う。私といてくれて、ありがとう。

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1994年長崎県生まれ。本を作るレーベル bundleを立ち上げ、編集をおこなっている。その傍ら私情的エッセイと詩の狭間で言葉を使った表現をおこない、2020年には初の詩集「いっさいすべての春」を刊行した。

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イラストレーター、漫画家。著書に『Less than A4』『セッちゃん』がある。

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