マスクを着用することが日常的になったことで、これまでとは違う肌トラブルが増えた人も多いのではないでしょうか。そのひとつの原因として、肌が酸性やアルカリ性に傾いてしまう「pHバランスの乱れ」が挙げられます。
弱酸性のコスメは肌に優しい、という話はよく聞きますが、肌が弱酸性以外に傾くと一体どんなことが起きるのでしょう? 今回は、ビューティーコネクション銀座クリニックの松田明子院長をお招きし、お肌の「pHバランス」や肌タイプ別のスキンケアのポイントをお伺いしました。
松田明子さん
ビューティーコネクション銀座クリニック院長。内科医、日本美容皮膚科学会所属。2017年都内美容クリニック院長に就任。2020年5月より現職。
マスクでムレたり、擦れたり……。現代ならではの肌悩み
日々着用しているマスクの摩擦やムレによって、落ち込みがちな肌のコンディション。松田院長のクリニックでも、マスクによる肌悩みを抱えた患者さんが増えたといいます。
「ニキビや肌荒れ、難治性の肌トラブルが増えている印象があります。マスクがあるからと日焼け止めを塗らなくなったことでシミの増加に悩まれる方や、ライフスタイルの変化によるストレス、食生活や睡眠時間のサイクルの乱れが肌荒れの一因になっている方も増えています」
肌は弱酸性が理想的。
酸性肌とアルカリ性肌に起こるトラブルとは?
さらに、「肌荒れや肌のくすみが気になる」という人も増加しているんだとか。この多くは、マスクを着用することで「メイクをしないから……」と洗顔を怠ってしまうことが原因。洗顔を怠ることは肌が酸性に傾くきっかけにもなるそうですが、肌が酸性寄りになるとどんなことが起きるのでしょう?
「肌表面の皮脂や汚れは酸性物質なので、時間経過によって酸化して刺激物となります。その影響で皮膚が酸性に傾くと、カブレや皮膚炎、湿疹の一因になってしまうんです」
じゃあ洗顔を念入りに……と思うところですが、たとえば石鹸はアルカリ性。使用後は肌がアルカリ性に傾いてしまいます。
「皮膚がアルカリ性に傾くと、皮膚が本来持っているバリア機能が乱れ、乾燥や炎症を起こしやすくなったり、雑菌繁殖による吹き出物が出やすくなったりします。ストレスやアトピー、炎症なども、その原因です」
皮膚本来のバリア機能がもたらす、健康な肌の仕組み
「トラブルが生じた肌のpH値を見てみると、酸性かアルカリ性に傾いていることが見受けられます」と松田院長。本来、弱酸性である肌の機能についてこう話します。
「肌表面は汗と皮脂が混ざり合った皮脂膜によって、弱酸性に保たれています。この肌本来が持つ皮脂膜のバリア機能は、肌の水分蒸発を防ぐほか、ブドウ球菌、アクネ菌、真菌など、雑菌の繁殖を防ぐ働きも。つまり、皮膚を健康な状態で維持することで、pHバランスが偏りづらくなるんです」
毛穴トラブルが目立つ酸性肌さんは「しっかり汚れを落とすこと」が大切
しかし、このバリア機能はマスクの摩擦によって低下してしまうことも。マスクの着用が避けられない現代の生活のなかで、松田院長は「肌質を見極めて適切なケアをすることが重要」といいます。では、毛穴トラブルが目立つ酸性肌と、ヒリヒリ乾燥系のアルカリ性肌、それぞれどんなケアをしたらいいのでしょう?
「酸性に傾いている場合は、しっかり汚れを落とすことが重要。ピーリングや毛穴洗浄を併用しつつ、日常のスキンケアを丁寧にするように心がけましょう。皮脂が多い場合は、ビタミンB2・ビタミンB6・ビタミンCなど、皮脂分泌をコントロールする成分を摂取するのもオススメです」
ヒリヒリ乾燥系のアルカリ性肌さんは「水分・油分をしっかり補給」
とはいえ、「石鹸は肌をアルカリ性に傾けるのでは?」と疑問を持った人もいるのではないかと思いますが、洗顔をしたあとにしっかりと肌を弱酸性に寄せていくケアをすることがポイントです。
「アルカリ性に傾かないようにするには、きちんと泡立てた泡でお肌を洗い、“しっかりと流す”こと。そのあと皮脂が分泌されればまた弱酸性のpHまで回復します。ただ、乾燥肌に対してやみくもに油分を与えるだけでは健康な皮膚にはならないので、洗顔後はしっかりと水分・油分の両方を補ってあげましょう」
マスク生活が長く続いて肌質が変わってきた……そんな現代ならではの敏感肌に悩んだ時は、食生活や睡眠はもちろん、「pHバランス」という新たなポイントに着目し、自分の肌が酸性とアルカリ性のどちらに傾いているのか考えてみましょう。最近では、pHバランスに着目した「pHコスメ」も増え、注目され始めています。今の自分のpHバランスを見極めて、ぴったりのスキンケアを探してみてはいかがでしょうか。