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PLAYWRIGHT
YURI YAMADA
MELON
PHOTOGRAPHY
AIKO IIJIMA
INTERVIEW & TEXT
# FEATURE

憧れて、やってみて
飽きてもいい。
山田由梨の思考

嫌だなと思うこと、少し心にひっかかることを、なんとなくそのままにして、なんとなく日々を過ごしていないでしょうか。そんなふうに「制作以外のことは全部面倒になってしまう」と自分自身をだらしない人間と語るのは、劇団「贅沢貧乏」を主宰する劇作家・演出家・俳優の山田由梨さん。山田さんはそんな自分の“だらしなさ”をどう割り切り、どんなふうに付き合っているのでしょう?

演劇というフィールドに留まらず、ドラマ制作や小説の執筆などにも表現の場を広げている彼女の「人にはオススメできない」という生き方や、「憧れて、やってみて、飽きたらそれでいい」というマインドセット、そしてコロナ禍で舞台表現の場が狭まってしまった現状についてお伺いしました。

『君はつくる側の人間かも』と、
監督が言ってくれた

幼いの時に習いごとの一環のように始めた子役の活動。大きな舞台に出る機会もありましたが、学業とのバランスをとるために一度芸能業界から離れます。

「でも、表現するということが好きという感覚はずっとあったので、ちゃんと学業をやったうえでまた戻ってこようと思っていました」

進学した高校には学園祭で演劇をする伝統があり、「3年間熱中していた」と演劇がまた身近なものに。高校3年生の時に映画に出演したことも山田さんにとって大きな分岐点でした。

「現場にいることがとても楽しくて、自分の出番ではない時も邪魔にならないところからモニターをずっと見ていたんですよね。そうしたら、監督が『君はつくる側の人間かもね』と言ってくれて。俳優だけではなく、つくる側になるという選択肢があるということに気づいた瞬間でした」

その後、大学に進学し、映像・身体表現を学べる学科を専攻。自主映画の制作などに明け暮れていた当時を「とにかくみんなでなにかをつくるという楽しさに夢中でした」と振り返ります。

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山田由梨
山田由梨
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山田由梨インタビュー
山田由梨インタビュー

嫌なことを身の回りから
なくすことに真剣

そんな大学生活と同時に俳優としての芸能活動をしていた山田さんですが、いわゆる若手の女優として求められる像に合わせようとしてしまっていることや、「いい子にしなきゃいけないと思っていた」と自分の思い込みに気づいていきます。

「初めて下北沢に舞台を観に行った時に、その人たちがつくり上げている表現、そこから感じるエネルギーに触れて、『自分はなにをやっていたんだろう?』と思ったんです。お人形さんのように、ただそこにいればいいという役割を果たすより、やっぱりなにかをつくりたいと思いました」

その後、事務所を退所。小劇場に通いつめ、オーディションを受け、舞台に出演するなど、とにかく自分で動いているうちに劇団「贅沢貧乏」を立ち上げていました。

「合わない場所に居続けることってすごい労力だと思うんです。そんな辛いことはない。嫌だなと思うことや自分に合わないことを身の回りからなくすことに真剣なんです」

「人にはオススメできない
生き方ですけどね」

嫌なことを身の回りからなくすという考えは生活にも影響しているのだとか。

「日常生活で仕方なくやることでも、たとえば『なんで洗い物をしきゃいけないのだろう?』って真剣に考えてしまって。それで、そのまま食洗機を買いに行きました(笑)。とにかくやりたくないことをなくして、やりたいことに時間を使うようにしています」

「でも、日頃感じた疑問や違和感から作品を作るきっかけみたいなものを得ているのかもしれないです」と山田さんは続けます。

「それはニュースを見ていて、どうして世界はこう動いていくんだろう、というような大きな違和感の時もあるし、『女の人だけ脱毛するのってなんでだろう』みたいな身近な疑問の時もある。いちいち立ち止まって考え込んでしまうのは大変だし、人にはオススメできない生き方ですけどね(笑)」

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“丁寧な暮らし”に
疲れちゃいません?

作品をつくっている時はそれ以外のことがすべて面倒くさく思えてくるという山田さん。お腹が空くことすら面倒なんだとか。

「最近はずっとドラマの脚本を書いていたんですけど、そうすると食べることも、お風呂も、朝起きて顔を洗うことも面倒くさくなってしまう。やばいですよね(笑)。でも、自分はそういう人間なんだって認めました。なにもかもを大事にするのは無理だから、大事なこと以外はもういいやって。食事だったら朝昼晩3食食べなきゃいけないと思わずに、昼起きてご飯食べて、夜中にまた食べて、朝まで仕事して、とか。作品をつくること以外、なにも課すものがない状態でいいなって」

それでいいと思えたのは、「無理だから!」だと言い切ります。

「“丁寧な暮らし”とかマジ無理!(笑) 憧れたこともありましたけど、私には無理。“丁寧な暮らし”っていいなあと思うけど、それが理想って思ってしまうと疲れちゃいません? 私も自炊できる時もあれば、出前を連日頼んでしまう時もあるし、それさえ面倒くさい時は飢えない程度になにか齧ってる(笑)。部屋も散らかっていますしね。でも、いい作品を書いて締め切りに間に合えばいいわけですから。できないことに対して自分を責めるのはやめました」

山田由梨
山田由梨
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憧れて、やってみて、
飽きたらそれでいい

しかし、「あまりにもそうやって生活が荒れるのは良くない」という気持ちも。

「ランニングを始めてみたり、ジムに行ってみたり、ちゃんとした習慣を根づかせようとした時期もありましたけど続かないんですよね(笑)。『そういう自分ってどうなんだ?』と思うこともありましたけど、なんでもブームでいい。だから、いいスキンケア商品を買って使ってみることも、運動も、憧れて、やってみて、飽きたらそれでいいって思っちゃってます。日々の自分を飽きさせない、楽しませるくらいの感覚です」

「気の赴くままに」。そんな思いが一貫している山田さんは、これからの活動も「やってみないとわからない」と話します。

「今までは自分の劇団の活動を表現の場の中心においてきましたが、去年は初めて小説を書く機会をいただいたり、今年はドラマの脚本にも挑戦したりしました。来月からはルーマニアの演出家シルヴィウ・プルカレーテさんが手がける『真夏の夜の夢』の演出補佐をやらせていただく予定です。今、演劇界はコロナの影響で今までと同じようには作品を作れない厳しい状況におかれているけど、それでも今から新しい出会いや発見があるんじゃないかと考えると楽しみです。自分の好奇心や興味、『やりたい!』という気持ちを大事にして、自分の意思に反することでなければ、これからも新しいことに挑戦していきたいです」

CREDIT

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山田由梨

1992年、東京生まれ。劇団「贅沢貧乏」主宰。劇作家、演出家、俳優として多方面に活躍。2017年に東京芸術劇場シアターイーストで上演の『フィクション・シティー』が第62回岸田國士戯曲賞作品最終候補にノミネートされる。近年では、ドラマの脚本や小説の執筆など活動の幅を広げている。

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MELON

1988年、韓国 ソウル生まれ。2104年東京工芸大学卒業後、SASU TEI氏に師事。2019年に独立。現在はTRONに所属。

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出演情報

東京芸術劇場30周年記念公演「真夏の夜の夢」(2020年10月上演予定)
https://www.midsummer-nights-dream.com/